新装・中国喇嘛教美術大観・図版編/諸尊身容表・図版解説/逸見梅栄/定価36000円/七世紀にチベットに伝来し定着した仏教の一派

2分冊 昭和56年 2冊で8cm程度

ラマ‐きょう ‥ケウ【喇嘛教】

〘名〙 七世紀にチベットに伝来し定着した仏教の一派。ラマが仏・法・僧の三宝にもまして尊崇されるところから、近代ヨーロッパ人が呼称としたもの。顕教を中心として密教を重視するのが特色で、独特の禁呪・祈祷の儀礼をもつ。一八派のうち、紅帽派（旧派）と黄帽派（改革派）が最も勢力をもち、一五世紀以降はラマの妻帯を禁ずる後者が主流となり、ゲンドゥンドゥプパを初代としてダライ‐ラマが宗派を統率するようになった。後、ネパール、ブータン、モンゴリア、満州におよび、一九五九年、一四代ダライ‐ラマがインドに亡命してからは、チベット仏教の中心は北インドに移った。
※風俗画報‐二三七号（1901）論説「囉嘛教の清国に行はるるは」
出典　精選版 日本国語大辞典

序にかえて
太平洋戦争後、世界の状勢は著しく変貌を遂げつつ今日にいたっているが、東洋の仏教研究者にとって特に関心 をひいているのは、戦争を契機として惹起され、中国における政体の変革によってもたらされた宗教事情である。 宗教の事情の中で、各宗教の宗勢の消長などについては今しばらくおき、宗教美術の面について少しく述べてみ たい。およそ戦乱の都度、建築・彫刻・絵画等の文化財が散佚するのは、いずれの国においても同じことで、中国 とても例外ではない。私の蒐集したものは、昭和十八年ごろまで存在していたものの姿であって、今より三十余年 前にさかのぼるのである。
当時、中国東北の地域では、清朝の滅亡後、「満州国」の建設と崩壊、国民政府と中華人民共和国政府との抗争、 国民政府の台湾への撤退が行われ、ついに中華人民共和国政府の力は全土を制し、 内蒙とチベット(西蔵)をも完 全にその勢力下におさめたのである。
われら他国人は、中華人民共和国政府の宗教政策がどうあろうと、口をさしはさむ権利はどこにもない。しか し、かつてチベットや蒙古において栄えた喇嘛教がほとんど壊滅の状態にあると聞いている。したがって、喇嘛教 教徒に信奉され護持されてきた寺廟や仏像仏画の類が、現在いかなる状態になっているのか、ひとしく仏教徒であ るわれわれとして、無関心でおることは忍びがたいところである。

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