※分解整備・実写確認済レンズを準備ができ次第追加出品中です。よろしければ出品リストからご覧ください。
○出品物は以下の3点です。
・SMC PENTAX 55mm F1.8
・フロントキャップ(Tokina)
・リアキャップ(ノーブランド・新品)
・F1.8の口径比を生かし,被写体の前後を大きくぼかした「ふわとろ描写が」きれいにできます。
・PENTAXの55mm F1.8レンズはアトムレンズを使用しているため、黄変が多めに発生する個体では撮影結果が暖色に偏りがちですが、出品中のSMC PENTAX 55mm F1.8は全くと言ってよいほど黄変がないため,大変カラーバランスが良好です。
・PENTAXの55mm F1.8レンズはSuper-Takumar 55mm F1.8が1965年にアトムレンズを使用したものに光学設計が変更され,その後,同一の光学設計のまま名称やデザイン・内部機構などの変更を重ねました。そして,今回出品したSMC PENTAXのものが55mm F1.8の最終型となり,マウントもM42からKマウントに変更されました。マウント以外にもフィルター径が49mmから52mmに,最小絞りがF16からF22に変更されました。後述のリンク先に私がこれまでに入手してきたPENTAXの55mm F1.8レンズを合計16種類並べた画像を置いていますのでよろしければご覧ください。
・このレンズは完全な状態であれば総合的に見てとても良いレンズだと思いますが,1つだけ欠点があります。それは,貼り合わせレンズに使用する接着剤がバルサムから光学接着剤に変更され,この接着剤に年数の経過とともに白濁が発生しているものが多数見られるということです。今回出品した個体にも接着剤の白濁がありましたが,貼り合わせレンズを剥離し,白濁した接着剤を除去した後,再貼り合わせを行いました。その詳細は商品説明の後段で説明しています。
・フォーカスリングの操作感を改善するためにCOSINAがヘリコイドラッピングと呼んでいる方法を参考にして同等の作業手順でヘリコイドの溝を研磨しました。この方法の詳細については、以下のリンク先に説明(pdfファイル)を置きました。
※参考までに商品写真に,この個体による実写例を入れましたのでご確認ください。実写例はSONY α7RⅡによるもので、すべてフルサイズ画像です。これらを含めた高解像度画像の実写例を以下のリンク先で確認できます。任意の画像を選択後「オリジナルを表示」または「ダウンロード」にすると,4240万画素の画像を部分拡大して見ることができます。また,ここでは商品の詳細画像も確認できます。
【外観及びレンズの状態】
・前玉,後玉ともに通常の目視では目立つ劣化は見られず見られずきれいな状態に見えますが、背後から強い光で照らすと絞り直前・直後のレンズ面に表面のコーティングの劣化と思われる薄い曇りが見えます。
・総合的な光学系の状態はおおむね良好だと感じます。実写例のように大変クリアな撮影結果が得られています。
・外観は目立つ傷もなく美品だと感じます。側面を4方向から撮影した高解像度画像を前述のリンク先に置きましたのでご確認ください。
・文字やマークの色はくっきりしていて見やすい状態です。
【可動部の状態】
・フォーカスリングは全周にわたって一定の手応えでスムーズに回転します。逆転時の遊びはなくピント合わせを正確にできます。ヘリコイドにラップ研磨処理を行ったため、回転時に指先にざらつきなどの違和感が伝わってくることはありません。
・絞り羽根に油の付着はなくきれいです。
・絞り羽根の動作はPENTAX MXボディに取り付けて確認しましたが,シャッターに連動して迅速に開閉しました。
・絞りリングはクリック感が良く、スムーズに回転します。
【このレンズの特徴等】
・クリアな撮影結果が得られ,F1.8では背景を大きくぼかしたふわとろ描写ができます。商品写真中にある写真でご確認ください。
・F8くらいまで絞ると高画素数のデジタル一眼で撮影しても画面の隅々までシャープだと感じる解像力の高い画像を得ることができます。
・最短撮影距離は0.45mです。
・PENTAX Kマウントのレンズです。
【分解整備の内容】
・内部のレンズ面に付着していたチリなどを可能な限り清掃しました。
・個々の部品に分解した際に水洗可能な部品はすべて洗剤による洗浄を行いました。表面に付いた汚れや古い油分を除去しました。
・フォーカスリングのヘリコイドに使用されていた古く汚れたグリスを除去し、ヘリコイドの溝の中までラップ研磨と呼ばれる方法で磨き上げ,溝の奥にたまった細かな汚れを取り除くとともにヘリコイド表面の荒れを改善し、表面をより平滑にしました。その後,粘度が適した新しいグリスを隙間なく充填しました。
・絞り環の回転にかかわる内部の部品について,残っていた古い固化気味の油分等を洗浄除去しました。その結果、より軽い力でクリック感良好に回転するようになりました。
・距離環と絞り環は多くの方に良好だと感じていただける操作感になっていると思います。
・PENTAX MXにマグニファイアを取り付けて確認しながら無限遠マークの中心で無限遠にピントが合うように調整しました。ミラーレス一眼にマウントアダプターを介して取り付けた場合は、そのマウントアダプターの設計や工作精度によって無限遠位置が異なりますが、オーバーインフの(無限遠マークのわずかに手前で無限遠にピントが合う)ものが多いと思います。マウントアダプターに取り付けて無限遠を精密に調整しても、その時使用したものでしか正確な無限遠が出ないためあまり意味がありません。そこで、フィルムカメラを基準にして調整しましたので、フィルムカメラで星や遠景の写真を撮影する場合に、フォーカスリングを∞位置に合わせただけでピントが合う状態になっています。
・無限遠調整は天体望遠鏡の接眼部に人工星を取り付けたコリメーターで高精度に行いました。
・入手当初は絞り直後の貼り合わせレンズ内にバルサム切れが見られましたので補修を行いました。その詳細は以下の項目で説明します。
【光学接着剤白濁の補修について】
・一度貼り合わせレンズを剥離して付着していた接着剤をきれいに除去しました。
・レンズの再貼り合わせは紫外線硬化型光学接着剤(Norland 光学接着剤 NOA63)で行いました。この接着剤はNorland社の数ある光学接着剤の中でもアクロマチックレンズやプリズムの貼り付けなどに適した特性をもつものです、
・最も難易度が高いのは貼り合わせ時に2枚のレンズの中心を正確合わせること(心出し)です。職人の方は指先の感覚でできるそうですが、私のような素人には簡単にはできません。そこで、今回出品した個体の場合は,光学接着剤を硬化させる前にテストチャート周囲のぼけによるにじみの量がすべての方向で均一になるまで調整を繰り返し、均一になったことを確認した時点で紫外線を照射して接着剤を硬化させました。
・2枚のレンズの心出しの状態は以下の方法で確認しました。出品した個体は、メーカー出荷時のレベルと同等の状態になっていると思います。
(1)遠景を撮影した画像の両端の解像度を比較することで片ぼけが発生していないことを確認。
※商品写真中にある片ぼけ点検画像でご確認ください。
(前述の実写例を置いたリンク先にある高解像度画像を強拡大して比較することもできます)
(2)絞り開放で撮影した画像でピントを合わせた部分がシャープに描写されているかを確認。
※貼り合わせの精度が悪いとピントのピークが見つからない状態になります。
(3)SONY α7RⅡでファインダーを12.5倍の拡大表示にして、絞り開放で自作したテストチャートをごくわずかだけピントを前後にずらし、ピンぼけ部分の広がりに偏りがないかを確認。前述のリンク先にある12.jpgがその確認用画像です。 ・再貼り合わせに使用した接着剤は通販サイト等で見かける紫外線硬化型接着剤ではなく,レンズやプリズムなどの貼り合わせの用途専用に製造された紫外線硬化型光学接着剤です。光学接着剤は屈折率が適切に調整されていて白濁が起きにくい性質のものです。
※過去に入手したオールドレンズで、バルサム切れ補修の形跡を確認できたものが2点ありました。これらの2点はいずれも心出しの精度が不十分で絞り開放時に中心部でも像が流れる症状があり実用不能の状態でした。前述のリンク先にある11.jpgがそのうちの1つSuper-Takumar 50㎜ F1.4 前期型の様子です。また、別の1点はバルサムではなく接着剤で再貼り合わせを行っていましたが、広い面積で白濁が生じていました。製造後何年も経過して白濁が生じたため、一度そのレンズを剥離してクリーニング後に再張り合わせをしたものと思われます。その後に再度短期間で白濁を生じていることになりますので、おそらく光学接着剤ではない一般用途の紫外線硬化型接着剤を使用したものと思われます。バルサム切れの補修が行われたレンズを入手する場合、心出しの精度や接着剤の種類が説明されていないものはリスクが大きく、出品者に事前確認しておいた方が無難だと思います。私のように高額で入手したレンズが絞り開放でピントが合わない、画面の片方で像が流れるなどの症状があると大きなショックを受けます。その経験から貼り合わせレンズの補修をする際には細心の注意を払っています。
レンズメーカーで行われている貼り合わせレンズの心出しについて紹介しているwebページがありますので紹介しておきます。
【私が行っている心出しの方法】
私にはこのwebページで紹介されているような装置がないため、リアルタイムで2枚のレンズの中心を確認しながら調整することはできません。そこで、以下の手順で心出し調整を行っています。
(1)2枚のレンズの間に光学接着剤を滴下して貼り合わせた後、接着剤が硬化していない状態でレンズセル内に戻して固定しする。
(2)テストチャートで心出しの状態(ずれている方向と量)を確認
(3)レンズセルの締め付けリングを緩め、貼り合わせレンズのずれを戻す方向に力を加え再び締め付けリングで固定する。
(4)(2)と(3)の作業を繰り返す。
(5)メーカー出荷時の状態を保っている個体と同等のレベルまで心出し調整を追い込んだところで紫外線を照射する。
以上の手順で作業を行うと運が良い時は数回でピッタリ合うこともありますが、そうでないときは10回以上繰り返し、そのうちに接着剤の硬化が始まり最初からやり直しになることも時々あります。 一時は、レンズの側面を3方向からスコヤで押さえ込む治具を作成して心出しを行っていました。この方法でもある程度までは位置合わせができたのですが、メーカー出荷時と同等のレベルを達成することができず、「メーカー出荷時に近い状態に調整しました」としか説明できませんでした。
【使用している光学接着剤】(NOA61とNOA63)
現在はそれぞれの接着剤の特性や作業効率の比較も兼ねてNoland社のNOA61とNOA63の2種類を入手して貼り合わせレンズの再貼り合わせに使用しています。Noland社の光学接着剤を扱う企業がネット上に公開している情報を見ると、NOA63がアクロマチックレンズやプリズムの貼り合わせに適するものとして紹介されていました。その後、接着剤の取り扱い業者のテクニカルサポートを通してNoland社にカメラレンズに適する接着剤を問い合わせたところNOA61も同様の用途に広く使用されているとの情報を得ました。
2種類の接着剤を実際に使用してみると粘度が大きく違い、NOA61はサラッと流れるため容器から出しすぎることがあり注意が必要でした。どちらも一般用途の紫外線硬化型接着剤のように紫外線を照射した瞬間に固まることはなく、同じ条件で紫外線を照射しても30分程度は固まらずその後も実用強度にするためにはかなり時間がかかります。
それぞれに付属してくる説明書には、接着剤が完全硬化前に使用すると接着剤を溶解することができる溶剤や、完全硬化後の剥離法も記載されています。完全硬化後は説明書にあるとおり200℃以上まで加熱しないと剥離できませんでした。これらの光学接着剤は光重合反応により液体から固体に変化するタイプで、この化学反応でできた無色透明の物質は反応前よりも融点が高くなり固体となりますが、一定の融点がなく加熱に伴い徐々に軟化していくそうです。実際に加熱による剥離を試みると剥離が起きた時点では流動体になっていましたが、それまでは貼り合わせレンズに全く変化が見られず冷やすと加熱前と変化がありませんでした。
ただし、接着剤の接着力で光学部品の重量を支えている場合には、加熱によりある程度接着剤の軟化が進むと剥離が起きやすくなるはずです。その例として私が入手したSuper-Takumar 50mm F1.4前期型には3枚張り合わせのレンズがあります。その中の1枚はレンズを押さえ付けるリングがなく接着剤の接着力のみでレンズを固定しています。このようなレンズの貼り合わせには軟化開始温度が十分に高めの接着剤を使用する必要があると思います。参考までに、それぞれの光学接着剤の耐熱温度はNOA63が60℃、エージング後のNOA61は125℃となっています。なお、NOA63は部品の表面をコーティングするなどの用途で使用する場合は90℃まで問題がないとしていますので、60℃を超えていきなり軟化することはなく、レンズセル内に収まっている貼り合わせレンズが剥離する可能性は低いと思います。
最後に加熱温度の上限についての情報です。どちらの接着剤も加熱温度の上限が300℃を超えたあたりとなっていますが、この温度を超えると光重合反応でできた無色透明の物質がさらに別の化学変化を起こして性質に異なる物質に変化する可能性があります。過去にTokina製のレンズに使用されていた貼り合わせレンズを、ガスレンジ内で上限の温度を超えると思われるところまで加熱した経験があります。この時はレンズの剥離には成功しましたが光学接着剤が茶褐色の物質に変化しました。また、この茶褐色の物質は溶剤に浸けても軟化することがなくレンズ面から除去できませんでした。
☆お願い☆
・オークションの終了後48時間以内需在賣家要求時間完成匯款に支払いを完了していただける方のみの入札をお願い致します。
・この期限が過ぎた場合は補欠落札者に連絡を取る,または,再出品のため「落札者都合にて削除」させていただきます。
・このレンズは,入手した時点で既に中古品でした。新品と同等の品質を希望される方にはご満足いただける状態とは言えません。また分解整備についても個人の趣味のレベルで行っているものでプロによるものではありません。入札される場合はそのことをご了承くださいますようお願い申し上げます。商品写真と実写例をじっくりご確認いただいた上で入札をご検討ください。
【送料】
・「ゆうパケットプラス」送料410円で発送致します。
※ゆうパケットプラスによる発送について
まとめて取引の条件を満たす場合は、標準レンズであれば4本程度を同梱して発送することが可能です。陸送扱いのため発送から配達まで3日前後かかります。配達は手渡し商品有可能只能自取,自取費用相當高,請查看頁面確認ではなく郵便受けへのお届けが基本となりますが、ご不在時の配達で郵便受けに入らない場合は再配達となります。再配達では配達日時の指定が可能です。置き配の設定も可能です。
専用の箱で発送することになっていて,大きさは縦17cm×横24cm×厚さ7cmです。
※まとめて取引について
・詳細は以下のヤフオクヘルプページでご確認ください。この条件を満たす場合はまとめて取引の対応が可能です。ヘルプにも記載されていますが,まとめて取引を行うためにはまとめたい商品をすべて落札後取引を開始する必要があります。
・まとめて取引は最大72時間以内の落札物に適用されますが,同一日以外のオークションでまとめて取引をご希望なさる場合は取引メッセージ欄からその旨をお伝えください。こちらからその可否についてご連絡をいたします。最初にご落札いただいた商品の取引開始前でもメッセージ欄から連絡を取り合うことは可能です。