1.『平和を我等に』(Give Peace a Chance) 2.『コールド・ターキー』(Cold Turkey) 3.『インスタント・カーマ』(Instant Karma!) 4.『パワー・トゥ・ザ・ピープル』(Power to the People) 5.『マザー』(Mother) 6.『女は世界の奴隷か!』(Woman is the Nigger of the World)
《Side B》
1.『イマジン』Imagine) 2.『真夜中を突っ走れ』(Whatever Get You Thru the Night) 3.『マインド・ゲームス』(Mind Games) 4.『夢の夢』(#9 Dream) 5.『ハッピー・クリスマス(戦争は終った)/平和を我等に(リプライズ)』(Happy Xmas (War is Over) / Give Peace a Chance (Reprise))
『平和を我等に』『コールド・ターキー』『インスタント・カーマ』『パワー・トゥ・ザ・ピープル』『ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)』は、シングルのみのアルバム未収録曲で、収録全11曲中、米国シングル・チャートのトップ40入りしたのは8曲、『真夜中を突っ走れ』は1974年に全米1位を獲得しました。 12分割された表ジャケットには、スペースごとにアルバム・タイトル&アーティスト名、収録された楽曲に合わせたイラストが描かれ、裏ジャケットには、今作タイトルの由来になったと思われる鰹節のイラスト、そして右下には"ウィンストン・オーブギー博士(Dr. Winston O’Boogie:タバコの銘柄Winstonをもじったジョンの変名のひとつで、アルバム『ロックン・ロール』に収録された曲『ジャスト・ビコーズ』に登場するキャラクター)による「沈黙の陰謀は言葉よりも雄弁である(A conspiracy of silence speaks louder than words.:「行動は言葉よりも雄弁である(Actions speak louder than words.)」という諺になぞらえている)」というメッセージが小さく書き添えられており、"conspiracy=陰謀"という言葉に、その後のジョンの隠遁生活が示唆されているようです。 振り返れば、ジョン・レノンの40年の生涯のうち、全エネルギーを費やしてメジャーな音楽シーンで活動をしていたのは、1962年のデビューから1970年の解散までの9年間と、ビートルズ解散後から主夫生活に入るまでの5年間の、合計14年間、そして15年目の活動再開の一歩を踏み出したときに、不幸な事件により、この世を去ってしまったのですから、余りにも短い期間が混乱や停滞も含めて濃密な期間だったことがわかります。 『平和を我等に』で始まり『平和を我等に』で終わる構成は、当時のジョンの心情も反映したコンセプト・アルバム風になってはいますが、『ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)』や『イマジン』のように静かな愛に満ちた平和の曲もあれば、『パワー・トゥ・ザ・ピープル』や『平和を我等に』のようにアジテーション的でエネルギッシュな曲もあり、『マザー』のように極個人的バラードもあれば、『女は世界の奴隷か!』のプロテスト・ソングでは敢えて"Nigger"という差別的な言葉を挑発的に使ったり、『スタンド・バイミー』や『真夜中を突っ走れ』ではシンプルなロックン・ロールを楽しんたり、『ゴールド・ターキー』ではヘヴィなサイケデリック風の狂気を覗かせたり、バラエティに富んだ楽曲というよりも、揺れ動く自身のアーティスト性をそのまま曝け出そうとする姿勢こそが、彼の音楽の本質だったのかもしれません。 今では『イマジン』が代表曲になり、"愛と平和のアーティスト"と評されることも多くなりましたが、本作はそういう一面的な定義や彼の天才性だけでなく、キャリアの継続的な困難さの証拠や、それを乗り越えてきた狂気と喧騒に満ちた日々の記録でもあります。