※分解整備・実写確認済レンズを準備ができ次第追加出品中です。よろしければ出品リストからご覧ください。
○出品物は以下の3点です。
・Super-Takumar 55mm F1.8(後期型を5期に分けた中の3期目のタイプです)
・フロントキャップ(ノーブランド・新品)
・リアキャップ(ノーブランド・新品)
※Super-Takumar 55mm F1.8は虹色サークルゴーストが出るレンズとして有名で,出品した個体でもF1.8で撮影すると商品写真に入れた実写例のようなカラフルなゴーストが撮影でき,被写体の前後を大きくぼかした「ふわとろ描写」も可能です。また,F8で撮影すると画面の隅々までシャープな描写ができ,高解像度のデジタル撮影にも対応します。
フォーカスリングの操作感を改善するためにCOSINAがヘリコイドラッピングと呼んでいる方法を参考にして同等の作業手順でヘリコイドの溝を研磨しました。この詳細については、商品説明の末尾に詳い説明を掲載しています。
※参考までに商品写真に,この個体による実写例を入れましたのでご確認ください。実写例はSONY α7RⅡによるもので、すべてフルサイズ画像です。これらを含めた高解像度画像の実写例を以下のリンク先で確認できます。任意の画像を選択後「オリジナルを表示」または「ダウンロード」にすると,4240万画素の画像を部分拡大して見ることができます。また,ここでは商品の詳細画像も確認できます。
【外観及びレンズの状態】
・光学系にカビ本体,くもり,バルサム切れは見られません。背後からライトで照らしてもほとんど劣化部分が見られず大変きれいな光学系だと思います。実写例を見ても大変クリアな撮影結果が得られています。
・外観は微細な黒色塗装の小さな剥げが見られますが経過年数相当の状態だと思います。詳細は商品写真および前述のリンク先にある高解像度画像でご確認ください。
・文字やマークの色はくっきりしていて見やすい状態です。
【可動部の状態】
・フォーカスリングは一定の手応えで全周にわたってスムーズに回転します。回転時の手ごたえは使用するグリスの粘度を変えることにより調整できますが、今回はこれまで出品してきた個体よりも少し粘度が大きいものを使用しました。無限遠から最短距離まで素早く回す場合は手ごたえが強すぎると感じますが、微妙なピント合わせの際には微調整がしやすく、思ったところでしっかり止まります。また、そこから不用意にピントがずれにくいと感じる操作感です。
・絞りリングは軽い力でスムーズに回転し、クリック感も良好です。
・フォーカスリング及び絞りリングは多くの方が良好だと感じる操作感に整備できていると思います。
・絞り羽根の動作はPENTAX SPボディに取り付けて確認しましたが,シャッターに連動して迅速に開閉しました。
【このレンズの特徴等】
・M42マウントのレンズです。
・Super-Takumar 55mm F1.8の前期型を4期に分類した中で2番目のタイプです。直前のタイプと比較すると指標環に赤外マークが追加されています。
・レンズのガラス易碎品限空運,非易碎品可使用海運。 材以外の部品は総金属製であるため,コンパクトなレンズにもかかわらず手に持つとずっしりと重たく感じます。
・クリアな撮影結果が得られ,F1.8では被写体の前後を大きくぼかしたふわとろ描写ができます。商品写真の中にあるF1.8で撮影した実写例をご覧ください。
・前期型にはアトムレンズが使用されていないため黄変が発生しません。カラーバランスは大変良好で、クリアで色彩鮮やかなな描写ができます。
・最短撮影距離は0.45mです。
【分解整備の内容】
・フォーカスリングのヘリコイドに使用されていた古く汚れたグリスを除去し、ヘリコイドをラップ研磨と呼ばれる方法で研磨し、溝の中を隅々まで磨き上げ,溝の奥にたまった細かな汚れを取り除くとともに表面をより平滑にしました。その後,粘度が適した新しいグリスに交換しました。その結果、新品時と同様の滑らかな操作感になっています。
・内部のレンズ面に付着していたチリなどを可能な限り清掃しました。完全に取り除くことはできていないと思いますが,かなりきれいな状態になりました。商品写真中のレンズ背後からライトで照らした画像をご確認ください。
・水洗可能な部品は分解時に洗剤による洗浄を行い汚れや不要な古い油分を取り除きました。
・絞り環の回転にかかわる内部の部品に残っていた古い固化気味の油分を洗浄除去しました。その結果、絞り環はより軽い力でクリック感良好に回転するようになりました。
・外装の黒色塗装に微細な剥げが多く見られましたので油性の黒色ペイントを使用して可能な範囲で度補修しました。指標環と絞り環そしてマウント部の文字やマークの色が黒ずんでいましたのでオリジナル色に近い色に調整したペイントで補修しました。これらのペイントは水濡れには耐え簡単にはとれませんが,エタノール等の溶剤でこすると少しずつ色落ちします。汚れが付いた際は乾いた布か水で湿らせた布で拭く程度にしてください。
・無限遠マークの中心で無限遠にピントが合う状態になっていることを、PENTAX SPボディにマグニファイアを取り付けて確認しました。
☆お願い☆
・オークションの終了後①24時間以内に取引を開始し、②72時間以内に支払いを完了していただける方のみの入札をお願い致します。
・①,②の期限が過ぎた場合は補欠落札者に連絡を取る,または,再出品のため「落札者都合にて削除」させていただきます。
・このレンズは,入手した時点で既に中古品でした。新品と同等の品質を希望される方にはご満足いただける状態とは言えません。また分解整備についても個人の趣味のレベルで行っているものでプロによるものではありません。入札される場合はそのことをご了承くださいますようお願い申し上げます。商品写真と実写例をじっくりご確認いただいた上で入札をご検討ください。
【送料】
・「ゆうパケットプラス」または「レターパックプラス」のいずれかで発送致します。
(ともに送料410円でご対応いたします)
※ゆうパケットプラスは匿名配送を希望される方にお勧めです。レターパックプラスは速達・手渡し商品有可能只能自取,自取費用相當高,請查看頁面確認配送を希望される方にお勧めです。どちらも安全な梱包を致します。
※ゆうパケットプラスによる発送について
まとめて取引の条件を満たす場合は、標準レンズであれば4本程度を同梱して発送することが可能です。陸送扱いのため発送から配達まで3日前後かかります。配達は手渡し商品有可能只能自取,自取費用相當高,請查看頁面確認ではなく郵便受けへのお届けが基本となりますが、ご不在時の配達で郵便受けに入らない場合は再配達となります。再配達では配達日時の指定が可能です。置き配の設定も可能です。
専用の箱で発送することになっていて,大きさは縦17cm×横24cm×厚さ7cmです。
※レターパックプラスよる発送について
まとめて取引の条件を満たす場合は、標準レンズであれば2本程度を同梱して発送することが可能です。速達扱いのため午前中に発送した場合は、多くの地域で翌日配達となります。配達日時の指定はできず、配達は手渡し商品有可能只能自取,自取費用相當高,請查看頁面確認ですがご不在の場合は再配達となります。再配達では配達日時の指定が可能です。
大きさは,縦34cm×横24.8cm×厚さは口が閉じれば制限なし(標準レンズ程度の長さであれば梱包材を巻いて直径10cm程度まで入りますのでこちらのほうが梱包の強度は高く、より安全な梱包ができます)
※まとめて取引について
・詳細は以下のヤフオクヘルプページでご確認ください。この条件を満たす場合はまとめて取引の対応が可能です。ヘルプにも記載されていますが,まとめて取引を行うためにはまとめたい商品をすべて落札後取引を開始する必要があります。
・まとめて取引は最大72時間以内の落札物に適用されますが,同一日以外のオークションでまとめて取引をご希望なさる場合は取引メッセージ欄からその旨をお伝えください。こちらからその可否についてご連絡をいたします。最初にご落札いただいた商品の取引開始前でもメッセージ欄から連絡を取り合うことは可能です。
【Auto-Takumar 及び Super-Takumar 55mm F1.8の種類について】
・Super-Takumar 55mm F1.8は,発売から生産の終了までデザインや内部機構に少しずつ変更が加えられ,多くのタイプが存在します。何年も前にネット上の情報を検索して調べてみたところ,このレンズには最低9種類のタイプが存在していることを知りました。また,Auto-Takumar 55mm F1.8も7種類ほど存在することを知りました。その後,新しいタイプのものを見つけるたびに入手し,少しずつコレクション数を増やしていきました。
・4種類のAuto-Takumar 55mm F1.8と9種類のSuper-Takumar 55mm F1.8(前期型4種類と後期型5種類),それに加えてSuper-Multi-Coated Takumar,SMC TAKUMAR,SMC PENTAXの画像合計16種を1つにまとめ,製造番号順に並べた画像を前述のリンク先に置きました。製造番号順に外観を比較していくと同じように見えても必ず1か所以上明らかな変更部分があります。間違い探しの感覚で見比べてみてください。ただし,以下に示すものは側面から見ただけでは見分けが付きません。
・新しい方のAuto-Takumar 55mm F1.8とSuper-Takumar 55mm F1.8前期型1番目
→前玉周囲の銘板に刻まれたレンズ名が異なるだけで,銘板を外すと見分けが付きません。
・Super-Takumar後期型1番目と2番目
→後期型1番目はA-M切り替えレバーの裏面に何も刻まれていませんが,後期型2番目は37100と刻印されています。
・Super-Takumar後期型3番目と後期型4番目
→後期型4番目は唯一マルチコーティングになっているSuper-Takumar 55mm F1.8です。
・後期型5番目と後期型3,4番目
→後期型5番目のみマウント部に開放測光に対応するための突起があります。なお、後期型5番目はSuper-Multi-Coated TAKUMARのものと並行して生産されていたため製造番号が前後している場合があります。
【このレンズで発生する虹色のサークルゴーストについて】
・F1.8の時には虹色の付いたサークル状のゴーストが発生します。このゴーストを活用して最新のレンズとは趣の違うオールドレンズらしい写真を撮影することができます。
・これまでTakumarシリーズの55mm F1.8のレンズは,Auto-Takumar,Super-Takumarの前期・後期のもの,Super-Multi-Coated Takumarのもの,そして,SMC TAKUMARのもので,それぞれこれらのレンズに発生する虹のサークルゴーストの様子を比較してきました。その結果わかったのはAuto-TakumarとSuper-Takumar前期のものではゴーストの直径が小さめのときに多重リング状の虹色ゴーストを発生し,それ以降のものでは複数のサークルが現れるものもありますが,その中で1本のサークルゴーストが特に目立つということです。また,このゴーストの発生量は個体差が大きく,ほとんど発生しないものやわずかにしか発生しないものも多くあることを確認しています。
ヘリコイドラッピングの概要と効果
出品中の個体に施しているヘリコイドの研磨は、現在、フォクトレンダーやツアイスなどの高級なマニュアルフォーカスレンズを国内生産しているCOSINAが自社のハイエンドMF交換レンズの生産時に最終仕上げとしてすべての個体に実施しているラッピング(Lapping)とほぼ同様の方法で行っています。これまで、商品説明中の【分解整備の内容】でヘリコイドの研磨剤による研磨とだけ記述していましたが、この方法が耳慣れないせいもありヘリコイドの研磨や研磨後の経年変化に対する不安からと思われるご質問をこれまで複数いただきました。そこで、新たに項目を起こしてこれらの不安を解消するための情報提供をすることにいたしました。
【金属研磨剤によるヘリコイドの研磨の概要】
●COSINAのヘリコイドラッピング
ラッピングとは研磨方法の1つで、ラッピング研磨またはラップ研磨とよぼれるものです。COSINAで行われているヘリコイドラッピングについては自社のHP上で一般に公開されていて、以下をクリックすると見ることができます。
●出品するレンズに使用しているラップ剤
COSINAのHP上で、ラップ剤(研磨剤)についてはその画像のみが紹介されていて、調合内容については公開されていません。そこで、ラップ研磨をネット検索してみると複数の専門企業が関連情報を公開していました。そこで、ラップ研磨の特徴や方法、そして、ラップ剤の種類とそれぞれのラップ剤が対応する研磨対象等について調べてみました。その結果をもとにヘリコイド研磨に使用するラップ剤をいろいろなパターンで準備し、試行錯誤を繰り返しました。その結果、十分に実用的なラップ剤を得ることができ現在に至っています。試行錯誤の過程では主に以下のの2項目について点検しました。
(1)研磨後の溝の表面の状態を拡大して観察し、ヘリコイド内に汚れ・こびりつき・傷によるめくれ上がり(バリ)などが除去されていること
(2)ヘリコイドにグリスを塗布して組み立て、実際に回転させた時にざらつき・トルクむら・反転時の遊びなどが指先に違和感として伝わってこないか
●選択したラップ剤とその性質
ラップ研磨に使用されているラップ剤には酸化アルミニウム・炭化ケイ素(カーボランダム)・ダイアモンドスラリーの3種が紹介されていました。私はこの中から最も硬度が低く金属から樹脂まで対応する酸化アルミニウムを選択しました。見た目は白色の微粒子です。酸化アルミニウムはアルミニウム製のヘリコイド部品の表面に自然形成される酸化被膜と同じ物質です。そのため、アルミニウムの面を削り取る力は弱く、ヘリコイドに付着した汚れや、アルミニウムの表面にできた傷によるめくれ上がりなどを選択的・効率的に除去することができます。もしもアルミニウムの表面層を削り取る必要がある場合は、より硬度が高い炭化ケイ素を使用すると作業が効率的に進むはずです。
●実際のラップ研磨の進め方
COSINAのHPに記述された方法と同様です。ヘリコイドの溝全体にラップ剤を塗布してヘリコイドを回転させ、回転を何回か往復させていくとざらつきなどの違和感が減少し、明らかに回転がスムーズになっていくことが指先で実感できますます。そのうちに手ごたえの変化がなくなりますのでその時点で研磨を終了しています。次に洗浄作業を行いラップ剤をきれいに洗い流します。
乾燥後は溝の状態をルーペで確認し、除去可能な残留物がある場合は、再度軽く研磨を行います。こうすることで必要以上に研磨をし過ぎないようにしています。以下のリンク先に私が行ったラップ研磨で残留物が除去されていく過程を記録した拡大画像を置きました。
この比較画像はヘリコイドグリスが固化して回転させることもままならない状態だったヘリコイドの部分を撮影した画像の部分拡大です。③ではヘリコイドの底部がきれいになっていることがわかりますが、所々にこびりつきが残っていますのでもう一度ラップ研磨を行う必要があります。
・画像1 未処理
・画像2 歯ブラシを使用した洗浄後
・画像3 1回目のラップ研磨後
この比較画像を見るとラップ研磨の効果がよくわかると思います。
●ラップ研磨のメリット
※精密研磨加の株式会社ティ・ディ・シー(TDC)のHPから抜粋
~ラップ研磨・ラッピング研磨のメリットとしては、細かい研磨剤を用いて小さな力で除去するので、加工対象物にストレスを与えず、所望の精度を実現することができます。平滑面が求められるものにもマッチしています。加工熱による歪みもあまり発生しない加工方法と言えます。平滑面を作ることは、部品としては高精度組立を実現したり、光学特性の向上、摩擦特性の管理、防錆等の観点からも有効と言えます。~
私が行っているラップ研磨でもヘリコイド鏡筒を重ねて擦り合わせる際には、回転させているだけで無理に力を加えて擦り合わせるようなことはしていません。ラップ剤がグリスの代わりにヘリコイドの溝内部に充填され、ヘリコイドを回転させるとヘリコイドの溝の間で研磨剤の粒子が浮遊して動き回りながら異物を削り取っていくような感覚です。
●ヘリコイドのかみ合わせを利用したラップ研磨
ラップ研磨を行う場合は研磨したい物体と形状がピッタリ重なり合う面と擦り合わせる必要があります。例えば凸レンズの表面を研磨する場合はその面と曲率が逆になった凹面の部材が必要になります。ヘリコイドの場合は組み合わせるヘリコイドが互いの溝の形状を補う形状に作られていますので、組み合わせるヘリコイド鏡筒どうしでラップ研磨を行うことでこびりついた汚れを等を効果的に除去することができます。
このヘリコイドの工作精度について調べていたところ、『精密機械』という書籍の記事として「精密工作法の実施例 写真機工業(1)」に掲載されていたものに詳細な説明が出ていました。カメラレンズの鏡筒ヘリコイドの製造時に使用するネジ切装置が5タイプが表にまとめられていて、それらのネジ切り精度は7μm~から20μmとなっていました。 これらの装置で刻まれたヘリコイドの溝は、端から端まで高い精度で刻まれていて、溝の中の向かいあう2面と底面がヘリコイド全体で均等に接触させることができるようになています。そして、グリスが入り込む空間ができるようにヘリコイド間で一定の間隔ができるように設計されています。そのため、グリスを塗布する前にヘリコイド鏡筒をねじ込んだ状態で前後方向や横方向に押し引きすると少し動くことが確認できます。(2つのヘリコイド鏡筒を最後までねじ込んだ後、前後に引っ張った時と押し込んだ時の長さの差を電子ノギスで測定したところ0.2㎜でした)また、ヘリコイドの溝の底面も凸部と凹部の表面同士もピッタリ接触できるようになっています。そうしないとヘリコイドの溝同士がたがいにくさびを打ち込むような状態になり、最悪の場合は動かなくなくなるはずです。もしも、ヘリコイドの溝に「異物が入り込む」、「こびりついた汚れがある」、「ヘリコイド自体に削れなどの凹凸ができる」などの原因で、許容範囲を超える大きさのものがどこか1か所でもあると、ヘリコイドの回転時にその部分の引っ掛かり感触として手に伝わってきます。
【金属の腐食について】
金属の腐食という言葉には、(1)金属の表面が酸化するすること、(2)金属の材質が劣化して当初の形状を保てなくなることのどちらも含まれます。通常の使用場面で(1)は起きていますが(2)が起きる可能性はほとんどないようです。
●アルミニウムの腐食
アルミニウムの腐食についてはネット検索すると多くの情報が得られますが、要点をまとめると以下のとおりです。
1 アルミニウムの表面には酸化アルミニウムの被膜が形成され、この皮膜は酸化などの腐食に対する耐性が強く、屋内環境では極めて安定しています。酸化被膜が傷などで剥げてもすぐに再形成されます。
2 酸・アルカリなどに対してpH4~pH8 の領域では不動態化した酸化皮膜が形成されているため、実用上良好な耐食性を有しています。
3 屋外で長時間放置した場合は白サビが発生します。これは雨水に含まれる塩分などの影響で酸化被膜が劣化し、空気や水に含まれる水素や酸素と結合し、白い水酸化アルミニウムが形成されたことによるものです。水酸化アルミニウムができるためには酸素のほかに水素も必要ですがその供給源は水です。そのため、ヘリコイドを長時間濡らした状態で放置しない限り白さびは発生しません。
4 屋外に放置されたアルミニウムの表面に銅や真鍮などの異種金属と接触している面があると、水が接触面に入り込み異種金属接触腐食が発生しアルミニウム側が腐食します。
以上のようなアルミニウムの性質から、カメラレンズを使用する環境で腐食が発生する可能性はほとんどないと考えられます。
直進キーや真ん中のヘリコイド鏡筒の材質は銅や真鍮になったものが多くあります。そのため、アルミニウムとこれらの金属の接触部分は存在しています。しかし、ヘリコイドの溝にはグリスが塗布されていてこれがシールドになる上、現実の使用場面では水にぬれた状態で長時間放置することがないため、異種金属接触腐食を発生した個体を見たことがありません。一定期間水没したことがある個体には発生している可能性があると思います。
●銅の腐食
ヘリコイドに使用される銅や真鍮(銅と亜鉛の合金)なども表面の酸化物を除去するとすぐに酸化が始まり酸化被膜が形成されます。真鍮は銅と亜鉛の合金ですが、銅と亜鉛の化合物ではなく混合物です。そのため成分として含まれる銅が酸化被膜を作ります。どちらの金属も酸化により酸化第一銅(赤色)及び酸化第二銅(黒色)へと化学変化が進行し、色が赤から黒っぽい色に変化していきます。この酸化被膜自体はアルミニウムの場合と同様に内部を酸化から保護する働きがあります。そのため、銅もアルミニウムと同様に長期間使用するものの素材として活用されています。
・ヘリコイドの溝が長年腐食しない証拠
ヘリコイドの溝の部分はグリスが塗布されているため酸化の進行が大幅に遅れます。その証拠として60年以上前に生産されたレンズのヘリコイドでも、グリスを取り除くと金属光沢が残っています。このことと同様に、ラップ研磨後ヘリコイドにグリスを塗布することで良好な状態が長期にわたって保たれます。このようなことからグリスがなくならない限り、また、水没など特殊な事情がない限り、操作感に影響するレベルの腐食が起きる可能性はほとんど考えられません。
・ヘリコイドの溝以外の研磨
ヘリコイドの溝以外の部分は常に空気と接しているため酸化は進行し赤色から黒色に変化してきます。また、屋外に銅や銅を成分として含む真鍮を長期間置くと、酸素以外に水素・炭素・硫黄などと化合した緑青ができます。この緑青も内部の金属を保護するほか抗菌効果があります。しかし、見た目が悪く、比較的もろいため粉のようなものがはがれてくる場合があますので緑青は除去した方が良いと思います。
また、酸化した部分は平滑性がわずかに損なわれているため、マウント内部にある絞り環の動きに連動して回転するリングなどの部品は接触部分の表面を軽く研磨しておいた方が絞り環を回す際の摩擦抵抗を減少させることができます。おそらく大量生産された部品は研磨仕上げまではしていないのではないかと思います。(真相は未確認)
動作の際に周囲の部品と摩擦が起きない部品の表面は研磨をしてもしなくても操作感には関係がありません。しかし、表面をラップ剤で短時間研磨をするだけで生産時の表面色に近づけることができます。酸化被膜は比較的簡単に色がとれるため厚さはかなり薄いようです。研磨後は再度酸化が進行し、新品時からたどっててきた色の変化を数十年かけて繰り返していくはずです。