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ヨーロッパ文明史
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ローマ帝国の崩壊よりフランス革命にいたる
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著者フランソワ・ギゾー
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訳者安士正夫
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ヨーロッパ文明は世界の歴史のなかで、どのように位置づけられるのか。フランス革命とナポレオン戦争という、大きな歴史的事件を経験したギゾー。ソルボンヌ大学の教授を務め、また七月王政期には首相として国政を担った歴史家が、その問いに答えた講義録。
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ローマ帝国の崩壊から始まり、キリスト教、ゲルマニア人、アラビア人が及ぼした影響、封建制度の確立からブルジョワジーの勃興へ、そして宗教改革を経てフランス革命へ。その鮮やかな語りは、政治家としての現実的な視点と、学舎としての豊富な知識に裏付けられ、七月革命前夜のパリに熱狂的に受け入れられた。
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福沢諭吉の『文明論之概略』の成立にも影響を与えた本書は、「文明」という概念が問われている現在、われわれに多くの示唆を与えてくれる。
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目次
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一八四〇年の序
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第六版の序
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第一講
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この講義の主旨——ヨーロッパ文明史——ヨーロッパの文明におけるフランスの役割——文明というものは語りうること——それは歴史上のもっとも普遍的な事実なること——文明なる語の日常通俗的な意味について——二つの主要事実が文明を構成する(一)社会の発展 (二)個人の発達——この主張の証拠——これら二つの事実は相互に必然的に結びついており、晩かれ早かれ互いに他の原因になること——人間の運命はその現在のもしくは社会的の状態の中にことごとく包含されるか——文明の歴史は二つの観点から観察せられ、提示せられうる——講義案について数言——諸精神の現状と文明の将来について
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第二講
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本日の講義の要領——古代文明の単一性——近代文明の多様性——その優越——ローマ帝国崩壊期におけるヨーロッパの状態——都市の優位——諸皇帝による政治的改革の試み——ホノリウスおよびテオドシウス二世の勅書——帝国という名の勢威——キリスト教会——第五世紀にキリスト教会の経過した諸状態——都市の職掌における聖職者——教会の好影響と悪影響——夷狄——夷狄は近代世界に個人の独立の意識と人間の人間に対する服従を導入する——第五世紀初頭における文明の諸要素の要約
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第三講
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本日の講義の要領——種々の制度は全て正統性を要望する——政治上の正統性とはいかなるものか——五世紀における全ての統治制度の共存——人の状態、財産、制度における不安定——それには二つの原因があった。一つは形而下のもの、すなわち侵略の継続であり、他の一つは精神的なもの、すなわち夷狄に特有の個性意識である——文明の諸原理は秩序の要求、ローマ帝国の記念、キリスト教会、夷狄であった——夷狄、都市、イスパニア教会、シャルルマーニュ、アルフレッドによる組織の企図——ゲルマニア人の侵入およびアラビア人の侵入の停止——封建制度の開始
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第四講
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本日の講義の要領——事実と教義の必然的契合——都市に対する田野の優越——小封建社会の組織——采地所有者の性質と家族精神とに対する封建制度の影響——封建制度に対する民衆の怨恨——僧侶は農奴に対してほとんど何もなしえなかった——封建制度を規則正しく組織することの不可能——(一)強力な権威の欠如 (二)公の権力の欠如 (三)職邦制の困難——封建制度固有の抵抗権の観念——封建制度が個人の発達に およぽした好影響と社会秩序に与えた悪影響
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第五講
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本日の講義の要領——宗教は聯合の一原理である——強制力は政府の本質には属さない——政府の正統性の条件 (一)権力がもっとも相応せる者の掌中にあること (二)被統治者の自由を尊重すること——教会は団体であって階級ではなかったからこの第一の条件を充した——教会内において実施されていた種々の任命方法および選挙方法——教会は権威の原理を不当に拡張し、力を濫用したために第二の条件に失格した——教会内における精神上の運動と自由——教会と諸王の関係——原理として樹立された精神界の権力の独立不覊——俗界の権力の侵略を目指す教会の自負と勢力
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第六講
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本日の講義の要領——教会内における統治者と被統治者の分離——俗人の聖職者に対する間接の影響——聖職者団は社会のあらゆる階級から補充された——公序と法制に対する教会の影響——教会の罪人教誡制度——人間精神の発達はまったく神学的である——教会は概して権力に味方する——少しも驚くことはない、宗教というものは人間の自由を規制することを目的とする——五世紀から十二世紀聞における教会の種種の状態——(一)帝国の教会 (二)夷狄の教会。二権分立の原則の発展。修道士団の発展について——(三)封建的教会。組織の企図。改革の要望。グレゴリウス七世——神政約数会——検討精神の復活。アベラール——自治体の運動——この二つの事実の無関係
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第七講
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本日の講義の要領——十二世紀および十八世紀における自治体の状態の比較概観——二重の問題——(一)自治体の解放について——五世紀から十世紀間の都市の状態——都市の衰微と復興——自治体の反抗——特典——自治体解放の社会的および精神的結果——(二)自治体の内政について——庶民の集会——長官——上層および下層市民——ヨーロッパ諸国における自治体の状態の多様性
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第八講
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本日の講義の要領——ヨーロッパ文明の一般史に対する一瞥——その特殊的、根本的性格——この性格の現れ始める時代——十二世紀から十六世紀間のヨーロッパの状態——十字軍の性格——その精神上および社会上の原因——この原因は十三世紀末にはもはや存在しない——文明に対する十字軍の効果
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第九講
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本日の講義の要領——ヨーロッパおよび世界の歴史における王権の重要なる役割——この重要性の真の原因——王権の制度を考察すべき二重の観点——(一)王権の固有、不変の性質——王権は正統の主権者の人格化である——その限度いかん——(二)王権の柔軟性と多様性——ヨーロッパの王権は王権の様々な種類の結果のように見える——夷狄流の王権について——ローマ帝国流の王権について——宗教的王権について——封建的王権について——いわゆる近代的王権、およびその真の特徴について
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第十講
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本日の講義の要領——近代ヨーロッパの種々な社会的要素を同一の社会の中、同一の中央棟力の下で調和させ、もろともに生かし、活動させるための試み——(一)神政組織の試み——この試みの失敗した理由——四つの主な障碍——グレゴリウス七世の過失——教会の支配に対する反動。人民側より、主権者側より——(二)共和組織の試み——イタリアの諸共和国——その欠点——フランス南部の都市——アルピ宗徒討伐十字軍——スイス聯邦——フランドルおよびラインの自治体——ハンザ同盟——封建貴族と自治体の闘争——(三)折衷組織の試み——フランスの三部会——イスパニアおよびポルトガルの国会——イギリスの議会——ドイツの特殊状態——これら全ての試みの不首尾——その原因いかん——ヨーロッパの一般傾向
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第十一講
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本日の講義の要領——十五世紀の特殊性——人民および政府の漸進的集中——(一)フランスについて——フランス国民精神の形成——ルイ十一世の統治方法——(二)イスパニアについて——(三)ドイツについて——(四)イギリスについて——(五)イタリアについて——語国家の対外関係および外交の発生——宗教思想における動き——貴族階級による改革の試み——コンスタンツおよびバーゼルの教議会——民衆による改革の試み——ヨハン・フス——文芸復興——古代讃美——古典派あるいは自由思想家——一般的活動——旅行、発見、発明——結論
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第十二講
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本日の講義の要領——近代史において普遍的事実を識別することの困難——十六世紀のヨーロッパ概観——性急な一般化の危険——宗教改革について指摘される種々の原因——その主たる特徴は精神界における専制権力に対する人間精神の反抗である——このことの証拠——諸国における宗教改革の運命——宗教改革の弱点——ジェズイット——宗教社会の革命と俗社会の革命の類似
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第十三講
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本日の講義の要領——イギリス革命の一般的特徴——主なる原因——この革命は宗教性よりも政治性を多く帯びている——三大党派が相継ぐ——(一)合法的改革派について——(二)政治的革命派について——(三)社会的革命派について——全てが失敗する——クロンウェルについて——スチュアート家の復辟について——合法内閣について——無節操内閣について——国民内閣について——イギリスおよびヨーロッパにおける一六八八年の革命について
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第十四講
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本日の講義の要領——イギリス文明の進行と大陸文明の進行の間に存する差異と類似——十七世紀および十八世紀のヨーロッパにおけるフランスの優位——十七世紀においてはフランスの政府による——十八世紀においてはフランス国自体による——ルイ十四世の政治について——その戦争について——外交について——行政について——立法について——その急速なる凋落の原因——十八世紀のフランスについて——哲学的革命の根本特徴——この講義の結論
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訳注
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後記
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新版へのあとがき(沢崎浩平)
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書誌
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アマゾンの書評より
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5つ星のうち5.0 権力の過信は必ず誤りを犯す
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ギゾーがソルボンヌ大学で行った14回の連続講義の記録である。初版は1828年に発行されている。本書は第六版になる。本書を大きく分けると、1.著者の文明史観、2.ヨーロッパ文明の起源、3.模索の時代、4.発展の時代 となる。
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1.著者の文明史観(第一講)
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ヨーロッパ独自の文明が存在する。芸術はイタリア、政治制度はイギリスが先んじているが、文明はフランスが先頭に立っている。
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文明のあり様を四つ仮定する。①生活の苦しみはないが、知的・道徳的生活のない国民(貴族政体の小共和国) ②生活はそこそこ、知的・道徳的にもある程度発展しているが、自由が抑圧されている国民(大部分のアジア) ③個人的自由はあるが、混乱と不平等、力と暴力の社会にある国民(ヨーロッパが通過した状態) ④自由で不平等もまれで、利害関係の対立も少ないが、公共観念が薄く、進歩のない社会(野蛮人の部族)の四つである。
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文明は二つの要素、社会的活力と個人的活力の発展からなる。だが、どちらが目的で、どちらが手段かは、文明史研究の課題となる。
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2.ヨーロッパ文明の起源(第二講~第七講;5~12世紀)
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ローマ時代は近代文明の揺籃期である。相反する要素が併存する状態であった。こうして野蛮時代(ゲルマン人の時代)に入るが、混沌としたままの状態を貴族政治とか君主政治、神政政治などと呼ぶのは誤りである。
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5から9世紀には、北はゲルマン、スラブ、南はマホメット教徒が侵入する(現在は侵入という表現は使わない)。この野蛮な状態を脱するために、ゲルマンは自分たちの法を基に、イタリア、ガリア地方はローマ社会の残滓を基に、スペインは強い教会の力で、フランスはシャルルマーニ帝の働きで、イギリスはアルフレッド大王によって、秩序が形成された。
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その結果、人心も安定し、封建制度というヨーロッパ最初の社会組織ができあがった。この封建制度は、専制政治の抑圧を民衆に生じさせ、宗教もこの状態を緩和することはできなかった。
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教会は己の支配欲が俗界に及び、聖職者と世俗君主との対立・妥協を生んだ。こうした民衆からの遊離は、11世紀に教会内部の改革運動(カノッサの屈辱)を招いた。
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領主と戦う市民を王が助けるという関係が生じ、12世紀ごろ自治体(コミューヌ)の解放が果たされた。徐々にではあるが市民階級(ブルジョアジー)の形成が見られた。ただし彼らは政治的勢力とはなり得なかった。
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3.模索の時代(第八講~第十一講;13~16世紀)
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政府と人民の力関係が生じたのが、13から16世紀の時代だった。11世紀から13世紀の十字軍の失敗は、領主の没落、王による中央集権化の傾向を強めた。王権は、国家の人格化である帝国的王権、神により支配される宗教的王権、選挙王政を基礎に宗教的要素が加わった蛮族的(ゲルマン的)王権があったが、9世紀中ごろから第四の王権、曖昧な形ではあるが封建的王権が現れ始め、12世紀にルイ6世(フランス王)に始まる近代王権を見るにいたる。これは特にフランスで顕著な王権で、あらゆる問題に王が介入し、人民にとっては社会の中心にある者と映っていた。
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当時のヨーロッパ社会を構成する聖職者、封建貴族、自治体を一つに統合しようとする試みはすべて失敗に終わった。この失敗の結果、中央集権化への道が加速した。そして、15世紀に人民と政府という近代社会の決定的な要素が準備されたのである。フランスばかりでなく、スペイン、ドイツ、イギリス、イタリアでも中央集権化が進行した。
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その一方、フスの宗教改革、ルネサンス、新大陸の発見が次の変革を準備した。
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4.発展の時代(第十二講~第十四講)
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宗教改革は、自分の力で考えるという自由探究の道を開いた。この自由探究と先の中央集権的絶対君主制が衝突したのが、17世紀のイギリス革命である。
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フランスは文明において先頭を走っていた。17世紀にはルイ14世が、戦争・外交・内政いずれにも卓越した力を発揮した。そのフランスがなぜ衰退したか。それは専制的権力以外に基盤を持たなかったからだ。いっさいの人間的権力は、人間的権利に制限をつけざるを得なくする自然の欠点、弱さと誤りの根源を包蔵しているのである。
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以上、フランス革命を見届け、その後一時政界にも身を置いた歴史学者ギゾーの考察である。ギゾーは、どの時代にあっても権力が自分の力を過信すれば、必ず誤りを犯すと確信していた。
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