そもそもこの「Big Life」、音質の良さで知られた作品ではございますが.......................................................
内容は言わずもがな。
ラインナップは全盛期名手揃い、Jack Blades(Vo&B ex-Rubicon、Stereo 後にDamn Yankees)、Kelly Keagy(Vo&Ds、Per ex-Stereo)、Brad Gillis(G&B-Vo、ex-Rubicon、Stereo、Ozzy Osbourne)、Jeff Watson(G)、
Alan"Fitz"gerald(Key ex-Montrose、Gamma、後にAlliance(Sammy Hagar Band絡み))となります。
通受けのゲストのバックコーラスがございます......................
かのKevin Chalfant(後のThe Storm等)。かの名バンドJourney人脈ではございますが、どちらかと言えば「サンフランシスコ・ロック人脈」の感がございます。
これだけ注目を浴び、成功を収めた割にはフォロワーがいないという不思議なバンド。メンバー全員が芸達者、それを生かした演奏・アンサンブルに楽曲というところがミソでございますが..............................
それもその筈、そもそもキャリアが異色。
「Sly & the Family Stoneにウエスト・コースト・サウンドを加えたかの様な」と評された、かの伝説の「California JamⅡ」にも出演したファンク系名ロックバンド「Rubicon」出身という、
メインで作曲を行うJack BladesやBrad Gillis。
12弦アコースティックギターをハイテク感巧みに操り、フュージョン系の正確な演奏力を持つJeff Watson。
アメリカンHR/HMの草分けとして知られ、BritishHM系バンド等にも奉られた伝説の「Montrose」出身。
メジャーか?ローカルか?というアメリカンHR/HMの極端な格差社会時代に中堅として孤軍奮闘した元同僚のSammy Hagar Bandにも在籍したというキャリアを持つものの、
何故か?当時の「ブラコン系」的な演奏や音造りをするAlan ”Fitz”gerald。
そしてかのRubicon解散後のJack Blades/Brad Gillisと「Stereo」というHRバンドを組みNight Rangerに発展するものの、
明らかにジャズやジャズ系名演奏者の影響を強く受けた「歌う手数系名ドラマー」(非常に珍しい)のKelly Keagy。
....................................真面な訳が無い!
メインの作曲はJack Bladesではございますが、メロディアスとは言えどアメリカンHR/HMの系のそれではなく、明らかにポピュラー系のもの。
(後々のStyxのTommy Shaw(Damn Yankees同僚)とのプロジェクトからも伺えますが.........)
その分野外のポピュラーさを持つ楽曲にハードさを加え、芸達者なメンバーの巧みな演奏・アンサンブルを練り込んだ音楽性はHR/HMにおいても非常に稀有なものではなかろうかと存じます。
Brad Gillis/Jeff Watsonのハードなツインギターのコンビネーションの巧みさが当時は売りでございましたが、
楽曲にスケール感や躍動感・立体感を作り出すKelly Keagyのドラミングも見事なもの(ハイハット、タムやシンバル捌きにも注目)。
一見HR/HM系に見えるものの、所々で(当時のポピュラー系)ブラコン感覚が演奏や音造りにも伺えるAlan ”Fitz”geraldの味付けも興味深いところ(ピアノ捌きも)でございます。
ハード/へヴィ面と分野外のポピュラーさの絶妙なバランスがNight Rangerの音楽性の確立を呼んだ感がございます............................後のDamn Yankeesも同様でございますが....................................
さて前作「Seven Wishes」は大ヒット、アメリカンHR/HMと言うよりはむしろ(日本で言う)A.O.R.系HRの代表作の感がございます。
今作「Big Life」ではプロデューサー交代。かのKevin Elson(かのJourneyのサウンドエンジニア。
かの名プロデューサーMike Stoneとのコンビで手掛けたかのJourney二作が大ヒット、オーディオファンにも評価が高い二作)を起用。
サントラ提供曲はかのDavid Fosterが手掛けております。
(ex-Airplay かのGeorge Harrison含むセッション周辺で名を挙げ、名ギタリストJay GraydonとのAirplay崩壊後は主にプロデューサーとして活動。Chicagoの復活にも尽力し名声を得る)
前作に引き続き、音造りを含め洗練度を非常に強めたもの。メロディアスさも(日本で言う)A.O.R.系の強いもの。
演奏・アンサンブルの有り方もヴォーカル中心の楽曲の範囲を意識した洗練されたものでございます。
但し、前作では鳴りを潜めていた感のあるツインギターの巧みさが目立ちます。
前作よりもNight Rangerらしさやロック的な躍動感が戻ってきた所もございますが、以前のHR/HMバンドとしての音楽性のスリリングさは前作同様控えめたものとなっております。
また前作同様Alan ”Fitz”geraldの演奏はディジタル・シンセ中心。
音楽性の洗練度や時代を意識したものとなりますが、Alan ”Fitz”geraldらしさは薄く「誰が弾いても同じ」な感があり、後の脱退に繋がる感がございます。
Kelly Keagyの巧みさは相も変わらずでございますが、落ち着いた感覚の演奏・アンサンブルや楽曲が目立つ作品となっております。
前作同様HM/HRの分野に収まらないJack Bladesのソングライターとしての才能を前面に打ち出した感がございますが、
これが解散に繋がるBrad Gillis/Jeff Watson組に代表される演奏面や音楽性での対立が燻る感がございます.....
チャートアクションは前作を下回りセールスも下落。
サントラ提供曲のヒットが生まれておりますが、ヒット曲以外のバンドの代表曲(質は粒揃いではございますが..........)と言われるものが前作以上に少なく、
おまけにメロディアスさを含めA.O.R.感覚が強く、アメリカンHR/HMであるNight Rangerのハードさやスリリングさは何処行った?との戸惑いが生まれたのも事実でございます..............
正直、メインソングライターJack Bladesに代表される音楽性の器用さ、メンバー全員に共通する演奏スタイル含めた器用さ、そこが逆にネックとなった感がございます.................................................
また当時大ヒットのかの「Chicago」の「16」「17」「18」を意識した感がございます。
David Fosterが手掛けたサントラ提供曲は「17」の大ヒット曲「Here Comes Along The Woman」を彷彿とさせる感があり、他曲も当時の「Chicago等のハード系A.O.R.路線」に近いもの(かの”Survivor”路線も.......).....
バラード楽曲は言わずもがな......................
(メロディアスさ含め)非常に質が高い楽曲が揃うものの、Night Rangerらしさは何処に?の感がございます....................何処かで聴いた様な.............................という感がございます。
ここがレコード会社がバンドに強いたものではなかろうか?との感がございます......................................................................................
以前からNight Rangerの音楽性にある分野外のポピュラーさがレコード会社の目に留まり、ファンの戸惑いはあれど前作は大きなセールスおまけに大ヒット曲。
シングルヒット志向の安易なマーケット分析がなされ、したり顔で関係者がバンドに介入した結果の感がございます。
(Asiaや”Cinema”Yes、Whitesnake等の例がございますが.........................)
プロデューサー交代、制作の有り方が変わった今作の音楽性を含めた有り方が後の解散に繋がった感がございます。
時代が変わった事もあり、シーンで苦戦するバンドに大きな影を投げかける事となります.......................バンドの”Identity Crisis”時代の好作と言えますでしょうか........................
されど高品質である事は事実。単体の作品と見れば、時代背景や関連する面を外せば、確実に名作と言えるものでもございます。
後のDamn Yankees路線(特に2nd)の楽曲も..................................
現在は入手が困難の模様。この機会に是非。
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